ブロード・ヘイブン事件1977——ウェールズの小学校で14人が描いた「銀色の葉巻」:農場の2メートルの巨人・国防省の「内密の調査」・1996年のアスベスト服の告白を徹底検証
1977年2月4日、ウェールズ南西部ブロード・ヘイブンの小学校で14人の児童が「銀色の葉巻形の物体」を報告し、校長が試験の条件で描かせた絵は驚くほど似ていた。春には農場やホテルに2メートルの銀色の巨人が現れ、国防省はRAF警察に「内密の調査」を依頼する。1996年、精製所のアスベスト防護服を着て歩いた男が告白した。国防省ファイル、14枚の絵の独立性、下水処理場の車両説、悪ふざけの告白、2020年代の再燃までを検証する。
日本語翻訳
はじめに——校長が「でたらめ」と言った金曜日
1977年2月4日、金曜日。英国ウェールズ南西部、ペンブルックシャーの海辺の村ブロード・ヘイブンの小学校で、14人の児童が「校舎裏の湿った野原に銀色の葉巻形の物体が降りている」と訴えた。9〜11歳の子どもたちの一部は、物体からとがった耳をした銀色の人物が出てきたとも言った。校長ラルフ・ルウェリンは最初、「ポピコック(でたらめ)」と一蹴した。子どもたちは放課後、警察署に出向いて陳情書を出した。
週明けの月曜日、校長は態度を変える。子どもたちを互いに見えないように離して座らせ、試験と同じ条件で「見たものを描け」と指示した。集まった絵は驚くほど似ていた。この絵が地元の獣医で英国UFO研究協会(BUFORA)の調査員だったランドール・ジョーンズ・ピューの手で新聞に渡り、村は全国的な騒ぎの中心になった。春には「宇宙服を着た2メートルの銀色の巨人」が夜の農場やホテルに現れたという報告が続き、一帯は「ウェールズの三角地帯(ウェルシュ・トライアングル)」と呼ばれるようになる。
国防省(MoD)はこの件で初めてRAF(英国空軍)警察に「内密の調査」を依頼した。その文書は2006年に国立公文書館から公開された。そして1996年、銀色の巨人の正体を名乗り出る男が現れる。本記事では、14枚の絵、農場の一家、国防省ファイル、1996年の告白、そして2020年代に再燃した理由を、PURSUE//JP編集部が順番に検証する。

第1章:14枚の絵——「一致」は何を証明するか
事件の核は、子どもたちの証言そのものより、月曜日に描かれた絵の一致にある。葉巻形の胴体、中央3分の1を覆うドーム、下部の赤っぽい光。当時10歳だったデイビッド・デイビスは2017年にBBCに対し、「銀色の葉巻形で、中央にドームがあった。見えたのはほんの2秒ほどで、木の陰から出てまた戻った」と語っている。デイビスは2024年に至るまで、一度も証言を変えていない。
ただし、絵の一致を「複数の独立した観察」と読むには条件がある。第一に、金曜日の目撃から月曜日の作画までに丸2日あり、子どもたちはその間に互いに語り合い、警察署に一緒に行っている。第二に、目撃は一斉ではなく、昼休みから午後4時50分ごろまでの間にばらばらに野原を見に行った児童が次々と校長に報告した、というのが同級生たちの記憶だ。つまり「同じものを同時に見た14人」ではなく、「最初に見た数人の話を聞いて、見に行った子どもたち」を含む14人である。
心理学者キアラン・オキーフはBBCの番組で、この種の事例を集団感染(グループ・コンテイジョン)の候補として挙げた。最初の子の描写が仲間の期待を形づくり、同じ場所で同じ時間帯に「それらしいもの」を見た子どもが描写を共有する。この説明は、14人が嘘をついたとは言っていない。一方で、デイビス本人は「絵が似すぎている」ことを理由にこの説明を退けている。編集部は、2日間の会話と順次目撃という条件がある以上、絵の一致だけでは独立性を証明できないと判断する。それは絵が偽物だという意味ではなく、絵の証拠力に上限があるという意味だ。
第2章:春の「銀色の巨人」——農場とホテル
2月の学校の話が終わりではなかった。約13日後の2月17日には教師のモーガンと給食担当の2人が、同じ野原で金属質の物体と人影を見たと報告する。女性たちは「下水処理場のタンク車では」と考えたが、校長は地面がぬかるみすぎて車は入れないと反論した。
村の南、リッパーストン農場では酪農夫ビリー・クームズと妻ポーリーン、5人の子どもたちが、ほぼ毎月何かを見たと訴えた。車のエンジンとライトが止まった、テレビが次々に焼けた、電気代が跳ね上がった。4月15日には、鍵をかけた囲いから妊娠中の雌牛16頭が約4分のうちに消え、800メートル離れた隣家の庭にいたという。4月下旬の深夜には、居間の窓の外に身長約2メートル、目も鼻も見えない銀色の人物が立っていた。ポーリーンは警察とピューに電話した。通報を受けて駆けつけた警官は1996年、26年の勤務で「最も怯えていた一家だった」と振り返っている。
4月19日未明には、隣村リトル・ヘイブンのヘイブン・フォート・ホテルの経営者ローザ・グランビルが、ブーンという音で目を覚まし、逆さにした皿のような明るい物体と、白い作業服のような姿の2人が何かを測っているように見えたと報告した。翌日、現場の草は円形に倒れていた。この野原には王立観測隊(ROC)の地下壕があった。グランビルは地元選出の下院議員ニコラス・エドワーズ(後のサッチャー政権ウェールズ担当大臣)を通じて国防省に説明を求めた。数日後、近くのRAFブローディ基地から飛行隊長(スコードロン・リーダー)コーワンが訪ねてきて、「ブローディには説明できるものは何もない」と言い、人々を不安にさせないよう口外を控えてほしいと頼んだ。彼は「精製所の作業員の防護服ではないか」とも口にしている。
第3章:国防省の「内密の調査」——2006年公開ファイル
ここから先は、2006年に国立公文書館が公開した国防省ファイルが語る部分である。
| 日付 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1977年2月4日 | 小学校で14人が銀色の葉巻形物体を報告 | 校長・児童の証言 |
| 2月17日 | 教師と給食担当2人が同じ野原で物体と人影 | 校長の記録 |
| 4月19日 | ヘイブン・フォート・ホテルで円盤と2人の人影 | グランビルの手紙 |
| 4月下旬 | リッパーストン農場の窓に2メートルの銀色の人物 | 警察通報記録 |
| 6月14日 | 国防省S4(Air)がRAF警察に「内密の調査」を依頼 | 公開ファイル |
| 12月 | S4がDIS(国防情報参謀部)に「悪ふざけの可能性」と報告 | 公開ファイル |
| 1996年 | グリン・エドワーズが銀色の服の悪ふざけを告白 | ウェスタン・メール紙 |
エドワーズ議員への回答で、国防政務次官ジェームズ・ウェルビラブドは「グランビル氏の報告以外に、この地域で異常な活動の記録はない」と述べた。公式にはそれで終わりのはずだった。しかしファイルには、UFO担当部局S4(Air)の責任者ジェームズ・ペドゥジーが6月14日、ウィルトシャー州ラドロー・マナーに拠点を置くRAF憲兵・保安部(P&SS)に宛てた手紙が残っていた。要点は3つだ。
1. 国防省はこれまでUFO案件でP&SSを使ったことがなく、低空飛行の苦情対応から人員を割きたくもない
2. 頼みたいのは、地元の不安の程度と、合理的な説明があるかどうかの判断である
3. 秘密扱いとし、大臣には伝えていない
手紙には、「ほかの点では分別のある人々」が多数目撃を報告していることへの驚きも記されている。P&SSの最終報告は残っていない。残っているのは12月の国防情報参謀部向け説明で、ペドゥジーは「1977年夏、ウェールズで懸念が高まったが、RAF警察は悪ふざけをする者の仕業ではないかと見ている」と書いた。
ここで注目すべきは、国防省が「宇宙船か否か」ではなく「住民がどれほど不安がっているか」を調べさせた点である。1977年の英国防省にとって、UFOは科学の問題ではなく世論と治安の問題だった。ラドロー・マナーを「英国UFO研究の真の中枢」と見る論者もいるが、この手紙が示すのは逆で、UFO担当者が憲兵隊に遠慮しながら頼み込む姿である。
第4章:1982年と1996年——アスベスト服と下水処理場
合理的な説明は、国防省ではなく民間の研究者から出た。
1982年、ヒラリー・エバンズの現地調査は2つの線を示した。一つは学校の件で、校舎裏の下水処理場に関係する車両を子どもたちが見誤った可能性である。もう一つは噂として、ミルフォード・ヘイブンの社交団体ラウンドテーブルの会員2人が、学校の目撃直後にブロード・ヘイブンで開かれた仮装パーティーのために、精製所の作業員が着る銀色の裏地のアスベスト防護服を借り、それを着てホテルや農場に現れたという話だった。
1996年、BBCのレイ・ゴスリングがラジオ4のドキュメンタリーのために悪ふざけの当事者の一人を探し当てる。その直後、ラウンドテーブル会員だったグリン・エドワーズがウェスタン・メール紙に自分の役割を告白した。服には固い一体型のヘルメットがついていて、それで身長が2メートルほどに見えたこと、ある女性がライフルか散弾銃を自分に向けたように見えて生け垣に隠れたこと、その女性が後で警察を呼んだことを語っている。「目も鼻も見えない」「ヘルメットのような四角い頭」という目撃者の描写は、一体型ヘルメットのアスベスト服とよく合う。
ただし、告白が説明するのは春以降の「銀色の巨人」である。エバンズも、仮装パーティーは学校の目撃の後だったと記している。2月4日の14人の絵は、エドワーズの服では説明できない。ゴスリングは中年になった元児童たちに悪ふざけを認めさせようとしたが、デイビスは「一生この話を貫く」と答えた。
第5章:説明できるもの、できないもの
事件を一つの「ウェールズの三角地帯」として束ねると、説明不能に見える。ばらすと、残る謎の大きさが見えてくる。
| 事象 | 最も負担の少ない説明 | 残る問題 |
|---|---|---|
| 2月4日 14人の目撃と絵 | 下水処理場関係の車両の誤認+2日間の会話による描写の収束 | 校長は「車が入れる地面ではない」と反論。葉巻形と赤い光の由来が弱い |
| 2月17日 教師らの目撃 | 同じ車両説 | 同上 |
| 4月のホテルと農場の銀色の巨人 | ラウンドテーブル会員のアスベスト服の悪ふざけ(1996年告白) | 悪ふざけの人数は1人か2人かで資料が食い違う |
| 農場のテレビ焼損・停電・電気代 | 老朽配線と通常の故障の積み重ね | 当時の記録がなく検証不能 |
| 雌牛16頭の消失 | 施錠の見落としと牛の移動 | 「縒り糸で縛った閂が無傷」という証言 |
| スタック・ロックスの「地下基地」 | ピーター・パジェットの著書による物語化 | 目撃は夜間の遠方の光のみ |
ここで、村から30キロ圏にあった軍事施設を無視することはできない。北にはロケット試験場のRAFアバーポース、南西にはRAFブローディがあり、ブローディにはホーカー・ハンターの訓練部隊のほか、ソ連潜水艦を追跡する米海軍の水中音響施設が置かれていた。地元紙ウェスタン・テレグラフの記者ヒュー・ターンブルは当初から「何か軍事的なもの」を疑っていた。元米海軍の水兵が後年、「銀色の人物は米軍の標準的な耐火服を着た隊員で、空の物体は新型のハリアー機だった」と語ったという話もある。もっとも、ハリアーは学校の野原に降りて木の陰に隠れることはできない。
編集部の見方では、「軍事説」は宇宙船説と同じ弱点を持つ。説明したい事象を一つの原因に束ねている点だ。実際には、下水処理場の車、仮装パーティーの服、基地周辺の夜間飛行、農場の不調、新聞とピューによる増幅——別々の原因がひと春に重なったと考えるほうが、どの証言とも矛盾しない。
第6章:なぜ「宇宙人を見た村」は2020年代に蘇ったか
半世紀近く前の村の騒ぎは、近年むしろ露出を増やしている。2021年にポッドキャスト『アンキャニー』が「校庭のUFO」として取り上げ、2023年にはスピルバーグ率いるアンブリンが制作したNetflixの『エンカウンターズ』が一話を割き、2024年にはBBCスリーとBBCウェールズの『パラノーマル:宇宙人を見た村』が4回にわたって追った。2017年には地元で40周年の催しも開かれている。
再燃には3つの理由がある。第一に、証人がまだ生きている。デイビスのように、10歳の記憶を50年近く変えずに語る人物は、映像作品にとって最良の素材だ。第二に、2006年の国防省ファイル公開で「政府が内密に調べていた」という裏付けが加わった。第三に、1996年の告白が事件を「全部嘘」にしなかったことだ。巨人は説明されたが、14枚の絵は残った。半分だけ解けた謎は、完全に解けた謎より長く生きる。
ピュー自身の行方も、この物語の後味を決めている。彼は1980年代初めにUFO研究から手を引き、晩年には目撃を悪魔の見せる幻だと考えるようになった。2003年の死はどの新聞にも載らなかった。村を全国区にした人物が、最後には自分の集めた話を信じるのをやめていた。
結論——14枚の絵は「嘘」でも「宇宙船」でもない
ブロード・ヘイブン事件1977を整理すると、結論は3つに分かれる。
1. 春の「銀色の巨人」は、精製所のアスベスト服を着たラウンドテーブル会員の悪ふざけで説明がつく。1996年の本人の告白と、「ヘルメットで2メートル」「目鼻がない」という目撃者の描写は一致する
2. 2月4日の14人の絵は、悪ふざけでは説明できない。下水処理場の車両の誤認と2日間の会話による描写の収束が最も負担の少ない説明だが、校長の「地面がぬかるんでいた」という反論は残る。ここは正直に未解決である
3. 国防省ファイルが示すのは隠蔽ではなく、UFOを治安と世論の問題として扱った役所の姿である。「内密」にしたのは宇宙船を隠すためではなく、大臣に知られずに憲兵隊を使うためだった
編集部がこの事件から引き出す教訓は、「村が宇宙人を見た」という一つの物語は、少なくとも4つの別々の出来事でできているということだ。子どもの絵、一家の恐怖、仮装の服、役所の手紙。それぞれを別々に調べれば、残るのは14枚の絵の由来だけになる。それでも残るものがあるから、ブロード・ヘイブンは今も語られている。
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